“M-PESA”について、あなたが知らない10項目

M-PESA(M-pesa、エムペサ)とは、ケニアにおいて人口の約3割(1,300万人)が登録するほど普及しており、銀行口座を持たない貧困層の金融システムへのアクセスを可能にしたとして名高いSafaricom社(サファリコム)のモバイルバンキングサービス。携帯からSMS(ショートメッセージ)を送ることで、銀行口座を持たずとも、送金、預金・引き出し、支払いをはじめとする金融取引を行うことができる。

しかし、M-PESAの具体的なオペレーションについては知られていない部分が多い。元マイクロソフトCEOビル・ゲイツ氏が設立した財団、Bill&Melinda Gates FoundationのシニアプログラムオフィサーClarie Alexandre氏が、M-PESAに関するよくある誤解について、世銀研究機関CGAPに寄稿している。

(写真はM-PESAのエージェント。物理的な現金のやりとり等を行う窓口で、たとえば送金の際、送金側は近くのエージェントAにて現金を渡し、受取側はAからは離れた自分の近所のエージェントBで現金を受け取る。現金は移動せず、その間のやりとりはSMSと仮想モバイルマネーの売買で完了する(誤解5参照)。エージェントは独自に資金を回す必要があるので、キャッシュリッチな地場のスーパーや自営業者が運営することが多い)

    誤解その1. M-PESAの取引で発生する資金は、サファリコムが管理している
    ケニア政府の規制により、いくつかの商業銀行に預け入れ、信託されており、サファリコムの管理外にある。たとえサファリコムが倒産しても、債権者は手をつけられず、M-PESAの資産は保全される。
    誤解その2. M-PESAは銀行システム外から資金を用意している
    M-PESAを通じて動く資金は100%、いくつかの商業銀行口座にプールされた資金を原資としている。
    誤解その3. M-PESA上の取引はモニターされていない
    M-PESAプラットフォーム上の取引はすべて、サファリコムによってモニターされている。銀行並みのマネーローダリング監視システムが働いており、ケニア中央銀行は定期的な報告を受けている。
    誤解その4. M-PESAはその成功により、今やかなりのシステムリスクにさらされている
    M-PESAの全口座残高を積み上げても、金額ベースで銀行預金の0.2%にしかならない。システムリスクを起こす可能性は低い。2010年6月、M-PESAの取引回数はケニアの電子取引回数の7割を占めたが、金額ベースでは2.3%に過ぎなかった。M-PESAの成功から言えることはむしろ、人々には小額の電子取引・預金への強いニーズがあったということだ。もともとM-PESAの取引、預金金額には上限が設定されている。取引金額は1日あたり70,000ケニアシリング=約70,000円以下、預金金額は残高50,000ケニアシリング=50,000円以下、1回あたりの現金出し入れ、個人間送金の上限は35,000ケニアシリング=約35,000円だ。 

    誤解その5. エージェントは、M-PESAやユーザに対して資金を供給している

    M-PESAユーザが取引や送金の際に、物理的な現金やりとりの窓口として訪れる「エージェント」は、事前にM-PESAのモバイルマネーを購入しており、現金を入金したいユーザに対してそのモバイルマネーを売っている。つまりエージェントは運転資金をまわしているのであって、誰かの資金を仲介しているのではない。現金が出金される際にはエージェントはユーザに現金を渡し、モバイルマネーを代わりに買う。結果、現金とモバイルマネー残高を常に保有している。エージェントはいわばM-PESAのヘビーユーザなのだ。  

    誤解その6. エージェントはサファリコムから指導・監督を受けていない

    エージェントになれるかどうかは、サファリコムによるデューデリとトレーニングの後決定される。定期的にモニターされ、再研修もあり、サファリコムは現場を2週間ごとに訪問することにしている。この仕組みはすべてのエージェントに適用されているので、M-PESAユーザはケニア中のどこでも同じサービスを受けられる。

    誤解その7. 金融リテラシー教育を受けずに人々にM-PESAを利用させるのは危険なのではないか

    簡単に支払いができるので、たとえば高額ローンの勧誘に狙われるといったリスクはもちろんあるが、これはM-PESAのアクセス簡便性がもたらす問題ではなく、借り入れに関する教育の問題だ。M-PESAについての金融教育で解決できるものではない。

    誤解その8. M-PESAを利用するのに身分証明はいらない

    M-PESA口座を開くためにはコピーでないオリジナルの身分証明書類が必要だ。エージェントは特にこの点をトレーニングされており、身元確認を適切に行わないと契約を解除させられる。事実、ユーザはエージェントを利用するたびにIDカードを要求される。SIMカードを持っていること、IDカードを提示すること、PINコードを認識していることを証明せねばならず、これは銀行以上に厳しい対応だ。

    誤解その9. M-PESAはトランザクションサービスを提供しているだけで、M-PESAによって人々が金融システムに包摂されるようになったわけではない

    実のところ、これについてはあなたが正しい。貧しい人々に必要な金融サービスは多様で、現金のやりとりだけでは-いくらM-PESAがそれを効率的にしたとはいえ-十分ではない。しかし明らかにしておこう。M-PESAの目的は人々に金融サービスへのアクセスを提供することだ。M-PESAは金融システムへの包摂を可能にする仕組み・手段ではあるが、それが目的ではない。

    誤解その10. 犯罪者もM-PESAを使うことができる

    これもあなたが正しい。犯罪者も存分にM-PESAを使用できる。一日あたりの取引制限があり、身分証明を要求され、どんな取引もモニターされ、どこで携帯が使われたかを知られるこのサービスでよければ。

    M-PESAは、預金と取引のプラットフォームであり、それ以上でも以下でもない。公的資金が投入されているわけではないので銀行ほど厳しい規制は適用されていない。M-PESAの役割は金融仲介ではなく、アクセスの提供だからだ。

出所:10 things you thought you knew about M-PESA

2 Responses to “M-PESA”について、あなたが知らない10項目

  1. Pingback: ケニアの通信、モバイル、ブロードバンド市場と予測 | Rising Africa

  2. Pingback: アフリカのモバイルバンキングサービス、どれだけあるの? | Rising Africa | ライジングアフリカ

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